彼は時折、家出する。 私にはよくわからない。 誰だって、逃げ出したい時がある。 現実から目を背けたい時も。 今自分を取り巻く全てのものが嫌になって、どこかへ行ってしまいたい、一人になりたい、って思うことは私でもある。 だけど逃げてどうなる？ 彼…

こういう時は実家に泊まることが多い彼だから、どうせ今日は帰って来ないだろうなと思っていたら 夜の9時過ぎに玄関の方で鍵を開ける音。 「ゆきが来ないって言ったら、お父さんがね、おにぎり作ってくれたよ。 正しく言うと、お父さんがご飯を炊いて、お母…

夕方頃、またバタバタと大きい音を立てながら彼が帰ってきた。 「ただいま」 「...おかえり」 この当たり前のやり取りだけど、 基本的に彼が自分からただいまという事は滅多にないし喧嘩してるときに彼のほうから話しかけてくること自体、ない。 だからきっ…

私は隣の部屋に行って 恐怖心と悔しさと悲しさで 声を殺しながら泣いた。 彼はバタバタと大きな音を立てながら出て行った。 仕事場に向かったんだろう。 私はしばらく泣いてた。 恐怖心と悔しさと悲しさに絶望感が相まって 声をあげて泣いた。 私が選んだ人…

「お前と一緒にいるのは地獄。結婚するのは地獄だから仕方ない。我慢するしかない。」 そう言われた。 喧嘩の売り言葉買い言葉ではなく、冗談でもなく。 「我慢することはないよ。そんなに嫌なら結婚するのやめていいし、私といるのもやめていいよ」 瞬間的…